近代遺産探訪|旧西置賜郡役所
≪はじめに≫
山形県の産業、交通、土木に関する近代建造物の由縁には、
「土木県令」などと称された初代県令三島通庸の存在があり、
彼の遺芳となる当時の画期的な建造物の一部は、現代もその
偉容を視認出来る特色がある。
然り乍ら文化財としての保存や活用が図られる近代建造物は
僅かであり、一方では産業の合理化、経済史の変遷、生活様式
の変革などを受け、本来の意義や技巧的で貴重な価値も一顧
されぬまま老朽化と評価され、ひっそりと消滅していく実情も
拭い切れない。
此処に於いて、本県に残る明治初期から昭和中期時代に掛けて
の“近代遺産”を個人的に探訪し、当時の情景を想見する。
旧西置賜郡役所(長井市高野町)
1878年(明治11年)7月に郡区町村編制法が制定し、本県では11箇所の
郡役所が設置されるが、1921年(大正10年)の郡制廃止以降も県内には、
東村山(天童市)、西村山(寒河江市)、東田川(鶴岡市藤島)、西田川
(鶴岡市家中新町)、西置賜の5棟の旧郡役所が現存している。
1926年(大正15年)郡役所廃止。
1996年(平成8年)長井市有形文化財指定。
2004年(平成16年)改修工事完成。
2011年(平成23年)復元工事完成。
■名称/旧西置賜郡役所
■所在地/長井市高野町二丁目地内
■種別/建築物(官公庁舎)
■構造・材質/木造平屋一部2階建
■竣工/1878年(明治11年)11月
構造は中央部が突出した寄棟造。外壁は下見板張り。
屋根は当時の瓦葺きから現在はトタン葺きに。
1・2階の窓上部にはファンライト(扇形のステンドグラス)や
軒下にはデンフィル(歯状の装飾)が施され、復元工事では
ポーチやベランダも再現されているが、玄関ポーチには虹梁に
木鼻が付くなどの神社建築の特徴的な意匠も視認される。
改修以後は小桜城跡に建設された由来から名称を『小桜館』とし、
コンサートやイベントなどに利用され、館内の見学も自由だとか。
現存する旧郡役所では県内最古であり、国内でも旧安積郡役所
(福島県郡山市)に次ぐ全国2番目の故事来歴があるという、
明治初期の貴重な擬洋風の建築物であろう。
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